THE WORLD
HIP HOP
STUDIES

辺境ヒップホップ研究会 研究報告

NEWS

辺境ヒップホップ研究会(第四回)
日時:2023年3月25日(土)・26日(日)

2023.06.24

会場:国立民族学博物館 第5セミナー室

①「ヒップホップから見るアラスカ先住民社会」

野口泰弥(北海道立北方民族博物館)

ヒップホップカルチャーの中心であるアメリカにありながら、地理/文化的に周縁に位置づけられるアラスカ。そのアラスカの音楽シーンにおいても先住民のヒップホップはさらに周縁に位置するものだと言えるだろう。18世紀に始まるロシアによる植民地化から19世紀後半のアメリカへの売却へと、アラスカ先住民はアメリカ本土の先住民とは異なる植民地経験を経てきた。本発表ではこのようなアラスカ先住民固有の歴史・政治・社会的文脈を踏まえつつ、ヒップホップカルチャーの中心国における周縁のラップとは何なのか、またアラスカ先住民は何を、なぜラップするのかという問いについて、グィッチンとアトナの出自を持ち、先住民のホームレス支援を続けているラッパー、サミュエル・ジョンズの活動を中心に考察する。

②特別講演「シベリア・サハのヒップホップ」

ヌマバラ山ポール(ラッパー、尺八都山流師範)

③「キューバのヒップホップ――アンダーグラウンド・ラップからトランスボーダー・ラップへ」

安保寛尚(立命館大学)

本発表では、社会主義国キューバにヒップホップがどのように侵入し、変化しながら展開しているのかを報告する。初期のアンダーグラウンド・ラップは、ソ連崩壊による経済危機が生んだ社会問題に対して、アフリカ系キューバ人のラッパーたちが共同体の不満を代弁して訴える運動を生んだ。しかし国営機関の参入、キューバ・ラップ第一世代の亡命、音楽業界の無関心によって運動は衰退し、新たな方向へと展開する。機器やインターネットの発展、革命への世代間の考え方の違いを視野に入れつつ、ラップのテーマや音楽が、次第にジャンルや国境をこえたトランスボーダーなものへと推移していることを代表的なラッパーを取り上げて紹介する。