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辺境ヒップホップ研究会(第一回)
日時:2022年7月17日(日)10:30~17:00
2023.06.27
開催場所:国立民族学博物館 第二演習室
①「ポスト社会主義国のヒップホップーモンゴルの事例から」
島村一平(国立民族学博物館)
発表者は、90年代からモンゴルのヒップホップの変遷を注目してきた。そこで著したのが2021年の『ヒップホップ・モンゴリアー韻がつむぐ人類学』(青土社)である。本発表では、本書の内容を概観すると同時に、ポスト社会主義国におけるヒップホップの特徴をモンゴルの事例から考察することを目的としたい。
②「ヒップホップ・インディア」
軽刈田凡平(フリーライター)
インドには、ヒップホップ的な要素が溢れている。ダンス好きで議論好きな国民性、ブロンクスのような多民族・多文化な環境、カースト制度や少数民族に対する差別、そして深刻な格差。マチズモ的な価値観の人々もいれば、コンシャスな考え方を訴える人も多い。さまざまな宗教やコミュニティの「ユニティ」も必要だし、女性のエンパワーメントもまだまだ足りていない。伝統に目を向けても、古典音楽に見られるリズムへの強烈なこだわりや韻律を伴う詩の文化がある。無いのは宗教的・文化的にタブーとされる過剰なセクシーさくらいだ。急速な発展を続けるインドのヒップホップシーンにおいて、米国で生まれたこの文化がどう実践されているのかを紹介する。
③「ウクライナ戦争とロシア・ヒップホップ――ポスト社会主義の音楽とナショナリズム」
中野幸男(同志社大学)
ウクライナ戦争開戦後、当局は国外に出国したラッパーのFACEおよびMORGENSHTERNを海外スパイに認定。また、当局批判を楽曲にこめてきたNoize MC、Oxxxymironはいち早く反戦の声を上げ、国外からウクライナを支援。なぜ現在のロシアでヒップホップがここまで当局から目をつけられるのか。社会主義時代にはロボットダンスすらも政治批判であった国のヒップホップの来歴を辿りながら、ジャズやロックと異なるヒップホップという音楽ジャンルの問題、黒人のいない国におけるヒップホップの黒人性の問題、ポスト社会主義社会でのヒップホップにおける音楽生産、流通、公演など現在の問題を考える。